10年後（4）

それからは、山川は用事がなくても私の施設へ来るようになった。
ある時仕事終わりに山川は自分の車で私の施設へやってきた。
「ドアは閉めなくていいから乗って」と言ったが、いざ車へ乗ると「ドア閉めて」と言った。
そして、車の説明を始めた。
山川は「車」が好きで、自慢らしい。
仕事帰りに私の施設へ来ると時は決まって「涼しい所で話そう」と言って、近くの霊園へと誘ってきた。
私は「ここでいいじゃん」と言うのですが、山川の耳には届かなかった。
言われるがまま霊園へ行き、たわいのない話を重ねた。
ある時山川は「今まで何人の人と経験したの？」と聞いてきた。
私は「そういうことをしたことがないから分からない」と言った。
本当のことを言った。
山川は大変驚いた顔をした。
そして、「新潟に病気の友達がいてお見舞いに行くんだけど一緒に行かない？」
と誘ってきた。
私は「それなら奥さんと行ってください」と言ったが、山川が「決めた、7月16日に行こう」と押し切られてしまった。